「以前は、頑張れば頑張るほど成績が上がっていたのに……」
「どんなに勉強しても手ごたえを感じない、伸び悩んでいる……」
勉強を続けていると、こうした壁にぶつかることがあります。
この勉強の停滞期は「プラトー(学習高原)」といって、どんな天才にも訪れるものだと、世界記憶力グランドマスターの称号をもつ池田義博氏は言います。
プラトーにぶつかること自体は決してマイナスではありません。しかし、その存在を知らないと、伸び悩んだ途端に「自分には才能がない」「能力の限界だ」と諦めてしまう可能性があります。
あなたが勉強の停滞期でつまずいてしまわないよう、プラトーをどのように乗り越えればいいのか、3つのヒントをお教えしましょう。
1:「プラトー」は、成績が上がる前兆である
池田氏は、プラトーをひとことで表すと「脳による知識の成熟期間」であると言います。私たちの理想では、学習時間の量に比例して習熟度も右肩上がりに伸びていってほしいものですが、実際のところはそうはいかないのだそう。
プラトーの状態にあるとき、脳は知識を整理して使えるかたちにつくり変える作業を行なっています。たとえて言うなら、本をきちんと整理して、本棚に並べるようなイメージ。そして池田氏いわく、期間の長さに個人差はあるようですが、プラトーの期間が終わると、脳は必要な知識をすぐに取り出して使いこなせるようになるのだそうです。その結果、応用力が利き、思考速度も高まるため、成績も一段と上げていくことができるとのこと。
こうした脳のメカニズムから、同氏はプラトーを「成績が上がる前兆」として、喜ぶべき時期だと述べています。そうは言っても、プラトーの期間を過ごすのはつらい……と感じる人もいるかもしれませんね。伸び悩みがつらいせいで、勉強が嫌になってしまったり、投げ出してしまったりすることもあるでしょう。そこで、プラトーを乗り越えるためのヒントを3つご紹介します。
【プラトーを乗り越えるヒント】
@ 一行日記をつける
プラトーをつらいと感じる原因として、トレスペクト教育研究所代表で『「1分スピード記憶」勉強法』の著者である宇都出雅巳氏は、「実際のスキルよりも、それを判断する “目” のほうが先に成長してしまう」ことを挙げています。
たとえば、英会話を学んでいる場合。最初は英語を話す楽しさを感じていても、プラトーが訪れると自分よりもっと流暢に話している人のほうが目について、「自分なんてまだまだ」「いくらレッスンを受けても上達しない」と自分のダメなところに意識が向いてしまうのです。そこで宇都出氏は、「プラトーの時期には、自分の成長を客観的に理解することが重要である」と述べています。
しかし、自分を客観視するのはなかなか難しいもの。そこでおすすめしたいのが、「一行日記」です。株式会社ネットマン代表取締役社長であり、行動変容の専門家でもある永谷研一氏は、「一行日記によって、自分を客観的に見る力が身につく」と言います。
一行日記の書き方は下記のとおり。自分の感情をマークや言葉で表し、その理由を20文字程度の短い文章で書いてみましょう。
例1)ガッカリ
このように一行日記をつけていると、「また同僚と比べて落ち込んでいる」と認知のクセに気づき、「いまはプラトーだから焦らない」と自分に言い聞かせることができるようになります。
さらに、心理ジャーナリストの佐々木正悟氏によれば「一行日記をつけると、同じように過ぎていく毎日でも、日々小さな変化が起こっていると実感できる」とのこと。そのため、つらいプラトーの時期でも日々飛躍の瞬間へ向かっていることが実感できるでしょう。
A 復習に専念する
精神科医の和田秀樹氏は、伸び悩みの時期には「できることをするのが鉄則」だと言います。具体的には、新しいことを学ぶのではなく、復習に専念するとよいとのこと。とりわけ、伸び悩みで自信を失っている人には、得意科目・分野の復習が効果的だそう。
復習によって基礎を固めると徐々に気持ちが落ち着いてくる、と和田氏は言います。たとえば、すでに解き終わった問題集に再チャレンジしてみるといいでしょう。高スコアを出せたら、これまでの学習の成果を実感してホッとするのではないでしょうか。
また、伸び悩みで落ち込んでいるときは自省的になるため、復習をすることで、抜け落ちていた要点や自分の弱点を再発見できるメリットもあるとのこと。そういった意味で、プラトーの時期は、これまでの勉強の完成度を上げる最高の時期とも考えられると、和田氏は述べています。
加えて、プラトーの期間を乗り越えるには、いままでとは少し違う刺激を加えてみるとよいと、公認心理師の大美賀直子氏は説きます。たとえば英語の復習をする場合なら、テキストだけで済ませるのではなく、オンライン学習動画やアプリなどを活用してみるという具合です。「英単語の暗記はアプリのほうがはかどる」「リスニング学習に動画を取り入れたほうがわかりやすい」といった新たな発見は、プラトー期間の突破につながるそうですよ。
B たまには何かのせいにしてみる
自分のダメなところに意識が向いてしまったり、過度に自省的になってしまったり……。これまでの話からもおわかりいただけるとおり、「プラトーの時期は自分と向き合いすぎる傾向にある」と、ビジネスパーソン向けに勉強法を提案するビジネスフレームワーク研究所は述べます。
このままの状態が続くと過度なストレスを受け、袋小路に入ってしまう可能性があるでしょう。そこで、気持ちを切り替えて再び勉強に取り組むためには、「自分に関係ないものに “責任転嫁” してしまうのもひとつの手」なのだそうです。
たとえば、「雨が降っているから頭がぼーっとしていた」「シャーペンの芯がしょっちゅう折れるから集中力が途切れた」といったもので充分です。あくまで自分のなかでの話なので、論理的である必要はありません。
なかには、何かに責任転嫁をすることに抵抗がある人もいるかもしれません。しかし、精神科医の西多昌規氏は、「一生懸命やってもなかなか結果が出ないときや、頑張ったのに失敗してしまったときに、すべてを自分のせいにしていたら自分がもたなくなる」と言います。ですので、責任感が強い方は心の応急処置として知っておくとよいそうですよ。
まとめ
勉強の停滞期は誰にでも訪れます。しかし、そこを乗り越えたら成績がぐんと伸びる時期に入るため、勉強することを諦めてしまうのはもったいないことです。今回紹介した3つのヒントは簡単にできるものなので、プラトーの時期に入ったら、ぜひ実践してみてください。
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