試験勉強や資格の取得など、学生にせよ社会人にせよ学習や勉強の機会は多くありますが、非効率的な勉強方法だと成果はあがらないものですね。
イーストロンドン大学で心理学を教えているポール・ペン氏が、効率的な勉強のやり方について以前、論じていました。
効果的な勉強法として5つ紹介されていましたので、解説していきます。
◆1:こまめに勉強する
ペン氏によると、一夜漬けで教科書の内容を頭にたたき込むような詰め込み学習より、勉強する時間を分散させてこまめに勉強をした方が効果的とのことです。この効果は、「スペーシング効果」と呼ばれています。
スペーシング効果の観点から言うと、例えば12時間勉強するにしても、12時間連続で勉強するより2時間の勉強を6回したほうがいいそうです。また、勉強と勉強の感覚が長いほど内容は定着しやすいものの、試験勉強など限られた期間で勉強しなければならないことも多いことから、ペン氏は「勉強の間隔を長くするより、勉強の回数を優先させるべきです。回数が多すぎるより、少なすぎる方が問題になりがちです」とアドバイスしました。
◆2:似た内容は交互に勉強するようにする
多くの場合、勉強する際は学習内容を科目やテーマごとのカテゴリに分けて、「あるカテゴリが終わったら次のカテゴリへ」と移っていきます。しかし、最近では似た内容を交互に勉強する「インターリービング」という勉強方法も効果的だということが分かってきているそうです。
例えば、ここで例に上げるテーマとしては不適切かもしれませんが、薬物心理学を学びたい人が「覚せい剤」「抑うつ剤」「幻覚剤」などの薬物について勉強したいとします。カテゴリごとに分ける従来の学習法の場合、まず「覚せい剤」を勉強してから次に「抑うつ剤」という具合に、薬物のカテゴリごとに勉強していきます。一方、ペン氏が勧めるインターリービングでは、まず「覚せい剤」「抑うつ剤」「幻覚剤」の定義を順番に調べて、次に「覚せい剤」「抑うつ剤」「幻覚剤」の作用機序を学んでいくというように、横断的な流れで勉強していきます。
ペン氏によると、カテゴリごとに分ける勉強法かインターリービングのどちらが効果的なのかは、学習の内容次第とのこと。例えば、似たテーマについて学ぶときのように、「違い」を探したいときにはインターリービングが向いています。
一方、カテゴリごとに分けていく勉強法は「類似性」を見つけるのに向いているため、最初から区別がはっきりしているものについて学ぶ際には効果的なのだそうです。
◆3:人の理解を再現するのではなく、自分なりの理解を身につける
ペン氏によると、人の記憶の原理は「再現」ではなく「再構築」にあるとのこと。そのため、ただ教材を読んで著者の理解を再現するだけでは、勉強内容が定着しません。一方、教材を読みながら疑問を持ち、それに自分の言葉で答えていくとその内容が効果的に身につくそうです。
具体的な方法としては、まず教材を読みながらできるだけ具体的な回答を必要とする疑問を作り、それに対する答えを教材の中から見つけて、自分の言葉で答えます。これを繰り返していき、最終的に教材を見なくても疑問に回答できるようになることを目指すのが、この学習法のポイントとのことです。
◆4:思い出す練習を勉強に取り入れる
これまでの研究により、単に情報をアウトプットするのではなく情報を思い出す、つまり記憶の中から検索する方が記憶が強化されることが分かっており、この効果は「テスト効果」と呼ばれています。
テスト効果について、ペン氏は「もしあなたがテストを宿敵として嫌っていたなら皮肉なことです。もしテスト効果を知っていれば、テストを学習ツールとして利用できたはずですから」とコメントしました。
テスト効果を勉強に組み込む際は、「学習・暗唱・復習」の3つのステップを使います。具体的には、まず短い文章を読んでから、それを思いだして暗唱し、それが合っていたかを見返すというもの。ここでのポイントは、一字一句間違わないように暗記することではなく、内容がしっかり理解できているかを確認できるまで繰り返すことです。また、暗唱するだけでなく文章として書けば、自分の理解を記したノートを作ることもできます。
◆5:マーカーを引くだけでなく、よく考える
蛍光ペンで大切な場所を強調する方法は、学生の間で広く用いられています。しかし、調査によるとマーカーを多く使う人ほど、マーカーを引くことによる恩恵が少ないとのこと。
これは、重要なポイントにマーカーを引く行為が問題なのではなく、なぜそこが重要なのかを考えていないことが問題だと、ペン氏は指摘しています。
そのため、ペン氏は「蛍光ペンを頭の中にデータを送ってくれる光学スキャナーのように使うのは結構なことですが、丹念に教科書を読むことに代えられるものではありません」と述べました。
また、ペン氏は末尾で「ジムに行くだけでなく、そこで汗をかかなければ意味がないように、勉強にも努力が必要です。幸いなことに、学生の成績と学習習慣に関する調査では、成績の高い生徒は必ずしも勉強に多くの時間を割いているわけではないことが示唆されています。つまり、人生をどれだけ勉強にささげるかではなく、どのように勉強するかの方が重要というわけです」と述べて、勉強時間より学習の質の方が大事だと強調しました。
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